8月は和太鼓ツアーに始まり、和太鼓ツアーに終わりました。前代未聞の和太鼓「破魔」ルワンダ・ツアーの顛末をお届けします。もちろん、あくまでもツアー裏方である小野由美子の個人的な見解であることを、あらかじめお断りしておきます。
そもそも、なぜ和太鼓がルワンダへ?
きっかけは、私が東京に引っ越して和太鼓教室に通い始めたことにさかのぼります。和太鼓の力強い響きには、人を元気にする不思議な力がありますよね。
国際協力の仕事に携わるようになってから、「自分は何者か」「自分が誇れる文化は何か」を考えるようになりました。着物や茶道も試しましたが、東京ではしっくりくる茶道教室が見つからず中断。その代わりに始めたのが和太鼓でした。
出張で休むことも多いのですが、ゆるく長く続いている和太鼓教室。以前から冗談半分に「海外公演やりたいですね」と話していたのですが、私は「有言実行」がモットー。ずっと頭の片隅に残っていました。コロナ禍も落ち着き、いろいろ一段落した2024年、教室のリーダーに「事務作業は私が引き受けるから、ダメ元で国際交流基金の海外派遣事業に応募してみませんか」と声をかけたのが、この一大プロジェクトの始まりです。
2024年12月に申請し、2025年4月にまさかの採択通知!そこから8月の渡航までは怒涛の日々でした(準備の話はまた別の機会に)。
8月10日(日)出発
最大の懸念は和太鼓の輸送。航空会社に手荷物サイズを何度も確認し、破損しないよう厳重に梱包しました。出発前には税関で「輸出託送品申告証明書」を取得し、帰国時の課税を避ける準備も万全。
チェックインを担当したのはJAL職員。われわれ6人(メンバー5人+裏方の私)の手荷物はスーツケースと太鼓を合わせて合計17個。JAL上級会員特典で無料枠が増えたものの、3個は超過料金対象に。ちょうどお盆の繁忙期で職員はピリピリしていましたが、なんとか預け入れ完了。
空港には関係者やご家族が見送りに来てくださり、荷物搬入まで手伝っていただきました。
8月11日(月)キガリ到着
今回、荷物の関係でエチオピア航空からカタール航空に変更。ドーハ経由で予定通り昼過ぎにキガリに到着。驚くべきことに、預けた荷物はすべて無事に到着!これがどれほど奇跡的なことか、この時点ではまだ知る由もありませんでした。
出口で職員に呼び止められ、他の乗客が荷物をすべて開けて検査されている場所に案内されました。絶望的な気分になりつつ「輸出託送品証明書」を提示しましたが効果なし。そこで奥の手――在ルワンダ日本国大使館からいただいたレセプション招待状!これが効き、無事に入国できました。この招待状は後日も大活躍します。
次の問題は迎えの車。なんと8人乗りの4WDが1台だけ。荷物の大きさも数も伝えてあったのに……。結局3往復してゲストハウスへ。途中、雨が降り出しそうで太鼓が濡れないかとヒヤヒヤしました。
メンバーは1棟貸し切りのゲストハウスで合宿。私は助っ人として同行したNPO仲間のNさんと隣のゲストハウスに滞在。そこはアートギャラリーも兼ねており、壁のペインティングが見ごたえありました。
この日は両替、SIMカード購入、スーパーで水や食料を買い込み、早めに就寝。私は夜中にドライバーからの電話で起こされましたが……。こうして初日が終了しました。
8月12日(火)表敬訪問の日
この日は3件の表敬訪問と会場下見。
まず在ルワンダ日本国大使館で福島大使にお会いし、公演の目的と予定を説明。「荷物が全部届いたんですか?よかったですね。カタール航空のロストバゲージ率は50%くらいですよ」と大使がさらりとおっしゃって驚きました。その後、最終日の慰労パーティについて職員の方と打ち合わせ。
次にJICAルワンダ事務所へ。木村次長と子育てや教育の話で盛り上がりました。
昼食は近くの「SAKURA」で初ルワンダ飯。午後はキガリ特別県キチュキロ区長を訪問。区長は文科省奨学生として鳴門教育大学大学院に留学経験のある方で、なんと私の教え子のひとり!日本の応援団として多大な協力をいただいています。
最後に会場に移動して下見。テントの高さや足場を入念にチェックしました。予想以上に時間がかかり、夕食はハンバーガーをテイクアウトしてゲストハウスで。
さて寝ようかと思ったら、メンバーから「お湯が出ない!」と悲痛な電話。5人が朝晩シャワーを使ったため、太陽熱のお湯が底をついた模様。カルチャーショック第1弾と言えるでしょう。
8月13日(水)KEZA Education Future Labでの初公演
いよいよ公演初日。会場はキガリ市内のKEZA Education Future Lab(KEFL)。ゲストハウスから車で10分ほど。太鼓は2往復して運び、人間はモト(バイクタクシー)で移動です。
KEFLは子どもたちにロボティックスやコーディングを教えたり、教員研修を行う民間教育施設。そこに通う子どもたちや近隣の子どもたち、保護者を招いてのイベントです。
開演は10時の予定でしたが、なかなか人が集まらずハラハラ。音響担当はルワンダ音楽をガンガン鳴らして盛り上げます。結局30分遅れでスタートしましたが、終わってみれば大成功!
プログラムは、和太鼓破魔の演奏と自己紹介、現地校女子児童による伝統舞踊、そして子どもたちのペンシル・ロケット体験。2人1組で紙ロケットを組み立て、ストローで飛ばします。羽根や重さで飛距離が変わるんですよ。時間はかかりましたが、完成したときの子どもたちの歓声は忘れられません。
和太鼓体験は子どもの行列が途切れず、どこで終わるか判断が難しいほど。最後は破魔の圧巻の演奏で締め、子どもも大人も警備の人までもが釘付けに。大盛況のうちに幕を閉じました。
ゲストハウスのハウスボーイ、日本名「タカ」も友人を連れて観に来てくれました。メンバーと親しげに写真を撮るタカの誇らしそうな顔が印象的でした。(KEFLでの様子は以下↓)
https://goldlensstudio61.pixieset.com/kezaeducationfuturelab
公演後はルワンダ名物ブロシェット(串焼き)のランチ。キミロンコ・マーケットに寄ってキテンゲ(アフリカ布)を物色し、全員が洋服をオーダー。最終日の大使館レセプションでお披露目予定です。
この日はさらにメンバーのご家族が合流。強行日程で滞在は短いものの、数日間同行することに。この夜は歓迎を兼ねてイタリアン・レストランでピザ。レストランから一望できるキガリの夜景に、15年前初めて訪れた頃との違いをしみじみ感じました。
初日の演奏で不安は吹き飛び、皆の顔は晴れやか。しかし翌日からは地方都市での演奏が続きます。ルワマガナ、ミヨベ、カバロンド……。車で片道2〜3時間かかる場所ばかり。しかも乾季のはずが、天気予報には雨マーク。輸送や会場の問題にどう対応するか。
――そして、シャワーは相変わらず水のまま。(続く)



















