ブログ世界で最も静かなラオスの首都ビエンチャンで感じたこと

インドシナ半島の国で唯一行ったことのない国がラオスであった。チャンスがあればぜひ行ってみたいと思っていたところ、タイ東北部から陸路でラオスに入国するというまたとないチャンスが訪れた。タイ・コンケーン出身の友人Nちゃんが里帰りするのに同行して、そこからメコン川を渡ってラオスに行こうというのである。調べてみると、コンケーンから北上してウドンターニーを通って、タイ側の国境の町ノーンカーイまで行けば、メコン川をはさんでその向こう側はラオス、首都のビエンチャンは目と鼻の先である。おまけにコンケーンの方言とラオ語はよく似ていてコミュニケーションも問題ないという。

交通機関の手配からホテルの手配まで全部お任せで、1月20-22日まで2泊3日の予定でNちゃん、ご主人のSさん、私の3人でビエンチャンに行くことになった。

国境まで:2件の想定外

20日の早朝5時、あらかじめ手配しておいたレンタカーでウドンターニーを目指す。7時にはウドンターニーに住むNちゃんのおじさんと合流して朝ごはんを食べる。なんでも、朝早く伯父さんに電話したら、一緒に行くということになった(!)という。ラオス通のフレンドリーな伯父さんで、想定外大歓迎である。ウドンターニーからは1時間弱で国境の町ノーンカーイに到着した。伯父さんの案内で有名なお寺におまいりして安全を祈願し、メコン川のほとりをぶらぶら散策。川の向こうが別の国というのは、島国で育った者には不思議な感覚である。川幅は思ったほど広くなく、泳いで渡れそうなくらいである。対岸のラオス側の家並みも走る車の姿もよく見える。10年ほど前は掘っ立て小屋しかたっていなかったのに、とSさんは感慨深げにつぶやいていた。

遠くにタイラオス友好橋を望む

メコン川を見下ろすレストランでおいしいベトナム料理に舌鼓を打ち、タイラオス友好橋の出国検査場に向かった。ここで想定外の大事件に遭遇する。なんと、Sさんのパスポートの有効残存期間が6ヶ月をきっており、タイを出国したらタイには入国できないと係官に言われたのだ。そもそも、なぜタイに入国できたのだ、と詰問される始末である。さてどうするか。私にとっては初めてのラオス行きである。Airbnbにはホテル代も払っているしこのまま無駄にはできない、Sさんはラオス経験者だし、ということで、Sさんをタイに残して3人でラオスに行くことに決定する。

橋イコール国境を渡る

タイラオス友好橋を車で渡る

タイ側出国検査場を出たところで橋を渡るためのタクシーに乗りこむ。橋の欄干にたなびいていたタイ国旗が途中からラオス国旗に変わり、ラオス領土に入ったことを示す。あっという間に対岸である。タクシーを降りて入国審査を受け、スタンプを押してもらってラオスのタナレーンに無事に入国。手元の時計は午後2時。両替屋、ATMなどが並んでいるが、人もまばら、静かでなんとものんびりとした国境である。タクシーに乗りこみ、市内へと向かう。このタクシーを借り上げて、ビエンチャン滞在中お世話になった。

ビエンチャンで感じたこと

いつもの個人旅行なら、いつ、どこに行って何を見るか、何をするか、何を食べるかを事前に入念に調べて計画するのだが、快適な通訳ガイド付きツアーの旅ではそうした主体性を忘れ、すべてお任せである。Nちゃんもそんなに見どころは多くない、ときっぱりと言う。世界遺産のルアンパバーンの方がよっぽど見るべきものが多いらしいが、いかんせん、時間がない。ということで、正味1日ちょっとのビエンチャン滞在で感じたことをいくつか記録しておきたい。

圧倒的な中国の存在感

ビエンチャンでは中国の圧倒的な存在感を見せつけられた。タイラオス友好橋のふもとの町タナレーンから市内に向かう道路の両側に広大な更地が広がる。おそらくは農耕地であったところを埋め立てたものであろう。そこにビエンチャン市内でもあまりみかけない高層ビルがポツン、ポツンと建っている。おじさんの情報によると、ラオス政府はこの広大な土地を100年の期限付きで中国に貸したという。真偽のほどは定かではないが、中国の一帯一路政策を考えればあり得ない話ではない。中国からバンコクまで鉄道計画があるということはNちゃんからも聞いていた。本当なら当然ラオスも通る。調べてみると、中国の高速鉄道計画では、昆明から、ラオス、タイ、シンガポールを鉄道で結ぶ。ラオス国内は中国との国境検問所のあるボーテンからビエンチャンまでの区間427キロで鉄道建設が進んでいるという。タイでは、ノーンカーイからウドンターニー、コンケーンを通ってバンコクまで高速鉄道が走る予定である。ラオス側では利便性向上のためビエンチャンとタナレーンを結ぶ鉄道路線を敷設する計画という。そうなると、タナレーンの周辺は物流の中心となるだろうし、それにかかわる様々な企業がオフィスや倉庫を必要とするようになるだろう。数年後には周辺の風景も様変わりしているに違いない。

体験的物価感

メコン川のほとりは、夜になるとナイトマーケットで賑わう。衣料品の店が目に付くが、観光客相手の土産物屋も多い。Tシャツ1枚10,000キップ(約120円)、ブラウス25,000キップ(約300円)で売っているが、タイや中国製である。ネットでも物価は東南アジアの中では高め、とある。多くのものを自国で生産できず、周辺国からの輸入に頼っているせいであるらしい。

朝ごはんに食べたバインミーは10,000キップ(約120 円)。パリパリのフランスパンに野菜、ハムを挟んだもので、これだけでおなか一杯になる。隣のテーブルの女性は、バインミー1/2と麺を食べていた。タイ東北部もラオスもなぜかベトナム料理店が多く、伯父さんが連れて行ってくれる食堂もベトナム料理である。Nちゃんに聞くと、野菜をたくさん使うベトナム料理は健康的というイメージがあるので、タイ人に人気がある、ということであった。衛生面を心配したNちゃんが屋台飯を禁止したので、食堂飯ばかりであったため、特に安いという感じはしなかった。その中にあって例外は国産ビール。有名なビアラオは330㎖が6500キップ(80円弱)。なんと200㎖の牛乳と同じ値段だった。

市内はヤンゴンやキガリほどではないが、建築ラッシュである。移動途中で見かけた100坪くらいの空き地。先行投資でビエンチャンに土地を買うのも悪くないと思い、伯父さんに値段を聞いたところ、答えは40万ドル。素人が目を付けるころにはおいしい物件はまず残っていない。

日本語教育の需要:技能実習生

伯父さんの知人から聞いた話。彼女の弟が日本語を勉強しており、来月から日本に働きに行く、という。技能実習生に間違いない。それを聞いて、法務省のデータを確認したところ、2019年6月現在、ラオス人技能実習生は505人である。日本在留ラオス人は2,882人であるが、永住、定住者1,939人を除くと、残りの在留者943人の6割近くが技能実習生ということになる。都道府県別にみると、首都圏以外で注目すべきは香川県の157人である。これは、香川県のファーマーズ協同組合とラオス東北部のシェンクワン県とが連携して、日本の農業人材不足の解消とラオスの持続的農業振興を実現しようとする事業によるものである。その弟という人ももしかすると香川県で研修を受けるのかもしれない。

外国人労働者新聞のサイトにはビエンチャン周辺と南部サバナケットにある送り出し機関が15件リストアップされている(JICA調査では17件)。民間の日本語学校としてチャンパ日本語学校(2002年開校、教育省認可)のほか、南部のパークセーにある日本ラオス人材交流教育センターなどが日本語教育を行っている。「日本ラオス人材交流教育センター」は民間の機関であり、ホームページに掲載されている日本の連絡先は、「株式会社ジェイピーエンジニアリング 担当:ラオス人材募集係」となっている。ラオスから土木建築関係の技能実習生を受け入れることを目的にしていると推測された。

JETROとラオス国内の経済特区は、日系企業のラオス投資促進に協力する旨の覚書にサインしており、今後日系企業が進出すれば日本語が話せる人材の需要は高まるかもしれない。

貧弱なメコン川、深刻な大気汚染

かつてカンボジアで見たメコン川は、決してきれいではなかったが、水量が豊かで堂々とした川だった記憶がある。しかし今回ビエンチャンでみたメコン川は、水位が低く、川の両側に河川敷が広がっている。明らかに川幅が狭くなっているのだ。Nちゃんによると、今年はタイもラオスも雨が少ないこと、メコン川上流にダムを作って水量を調整しているためとのことであった。

もう一つ気がかりだったのはPM2.5による大気汚染である。太陽が出て晴れているのに、空全体がピンクっぽい膜をかぶっているように見える。排気ガスを疑ったが、ビエンチャンは他の途上国に比べて車も少なく、交通渋滞もない。不思議に思って尋ねると、収穫期の大規模な野焼きが原因とのこと。ルワンダ同様、地方では調理に薪や炭を用いていることも関係しているだろう。

おわりに

ベトナム、ラオス、タイ東北部は近い

タイのコンケーンでもノーンカーイでも、そしてビエンチャンでもベトナムという言葉をよく耳にしたし、ベトナム料理を食べさせる店がそこかしこにある。これは意外だったがインドシナの地図を見てなるほどと思った。ベトナム、ラオス、タイ東北部は地理的に近いのである。

ベトナム戦争の時、戦火を逃れてラオスやタイ東北部に逃げてきてそのまま居ついたベトナム人も多いという。国境はあっても人の行き来が容易なこれらの国々では、昔からいろいろな理由で相互に移り住んでいたのだろう。Nちゃんのルーツも中国だという。それとともに、広大な国土を持ち、多くの国と国境を接する中国の一帯一路構想の現実味を実感したラオス、タイ東北部の旅であった。

参考サイト

中国・ラオス・タイ、鉄道の国境接続に関する協力覚書を締結(JETRO)https://www.jetro.go.jp/biznews/2019/05/af21021f273d15bf.html中国「一帯一路」構想にのみ込まれるラオス(日本経済新聞)https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51627910R31C19A0000000/在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表(法務省)http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_touroku.htmlラオス Laos(外国人労働者新聞)https://外国人労働者新聞.com/archives/209ラオス 2017年度 日本語教育 国・地域別情報(国際交流基金)https://www.jpf.go.jp/j/project/japanese/survey/area/country/2017/laos.htmlボランティア教員募集のお知らせ(ラオス日本人材交流教育センター)https://laos-japan-school.com/2016/03/08/volunteer/#commentsラオスの経済成長と工業化への道(大和総研グループ)https://www.dir.co.jp/report/asia/asian_insight/20180502_020070.htmlJETROと日系企業のラオス投資を促進することで協力覚書締結(パクセー・ジャパン経済特区)https://pjsez.com/%ef%bd%8a%ef%bd%85%ef%bd%94%ef%bd%92%ef%bd%8fと日系企業のラオス投資を促進するこ/アジアからの農業技能実習生 派遣積極的も帰国後に課題 JICA調査(日本農業新聞)https://www.agrinews.co.jp/p49775.htmlラオス政府と香川県の農業生産法人と連携し新たな実証事業を開始(JICA 国際協力機構)https://www.jica.go.jp/press/2019/20191028_20.html

人もまばらな入国審査
入国、両替やATMがある
メコン川沿いの外国人向けバー
ナイトマーケットの賑わい
夜のメコン川 対岸はタイ
ラオスの凱旋門
伝統的衣装で結婚式の前撮り
市内繁華街、DAISOもある!
ハードロックカフェもある
手軽な屋台の朝ごはん
ラオスの家庭料理、主食はもち米

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